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超伝導って何だろう?
NMRとは・・・

核磁気共鳴法(NMR、"Nuclear Magnetic Resonance")とは物質の性質を明らかにする実験手段の一つで、 私たちは主にこの方法を用いて研究を行っています。

MRI

この核磁気共鳴法は現代の科学において非常に重要な役割を担っており、固体物理の分野だけに限らず 化学、生物の分野でも大きな研究成果を挙げています。また医学の分野においてもMRI(核磁気共鳴映像法)に 応用されています。 ここではこの核磁気共鳴法について簡単に説明します。

私たちの身のまわりにある全てのものは物質の基本単位である原子からできています。 そしてこの原子は+(プラス)の電気を持つ原子核と−(マイナス)の電気を持つ電子から作られています。

スピン

この原子核や電子には電気的な性質の他に 磁気的な性質という非常に重要な役割があり、これによって 原子核や電子は一つの小さな磁石と考えることができるのです。これをスピンと呼びます。

原子核が作る磁石(核スピン)の大きさは電子が作る磁石(電子スピン)に比べて非常に小さく、このために 電子の作る磁石の方が物質の性質に大きく影響するようになります。 また原子核は移動できないのに対して、電子は自由に動きまわったり、全く動けなかったりと物質によって様々 な性質を持っています。 

つまり、電子こそが物質の性質を決定付けるのに非常に大きな役割を担っている、と いえます。ですから固体物理の分野では電子の状態を知ることが非常に重要になっているのです。 核磁気共鳴法とはこの電子状態を明らかにできる実験手段なのです。

「核磁気共鳴」、の中の「」という字が表すように、 この実験手段では、電子状態を見るために原子核を 用います。そしてこの実験手段では、まず試料に対して外部から磁場を加えた上で測定をします。

普通、磁場中の磁石はその向きによって異なるエネルギーの値をとるのですが、原子核の場合、単純には2つ のエネルギーの値のみしか取れません。 つまり加えた外部からの磁場方向と核スピン(原子核の磁石)の方向が「同じ向き」か、「反対向き」か、の 2通りしかなくなってしまうのです。

ここで、(外部磁場を加えている状態で)さらにこの2つエネルギーの差と同じエネルギーの値を持つ振動磁場 (時間により変化する磁場、つまり振動する磁場)を原子核に当てます。

すると、最初低いエネルギーを持っていた原子核がエネルギーを受け取って、高いエネルギーを 持つ状態に移ることができます。これが「共鳴」という現象です。

その際、電子は2つのエネルギー値の差(振動磁場のエネルギー)にも影響しますし、また、振動磁場によって 高いエネルギーに移った原子核が、受け取ったエネルギーを電子に受け渡して元の低いエネルギー値の方に 戻ってくるので、それまでにかかる時間調べれば電子がどのような状態にあるのかが分かるのです。

このNMRと言う手法の有効な点を述べると、原子核を用いて間接的に電子状態を見ることで 電子状態を変えること無しに測定ができるという点にあります。

またNMRの測定では、通常の測定と違ってある特定の原子核の周りの電子状態を測定することもできる、という 特徴もあり、この特徴から「微視的測定」とも呼ばれています。

このような特徴からNMRは固体物理の分野、特に磁性や超伝導の研究分野で活躍しています。

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