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核磁気共鳴法
(Nuclear Magnetic Resonance)
ミクロの視点で電子を探る!

外部磁場中で原子核の核スピンはゼーマン分裂を起こしますが、 そのエネルギー分裂と等しい高周波磁場を印可してその共鳴現象を観測する核磁気共鳴(NMR) は、 物理、化学、生物、医学といったほとんどすべての自然科学の分野で、 ミクロな世界の精密なデータを提供する非常に重要な実験手段となっています。

 

例えば最近の医療の分野で、これまでのX線診断にとって変わろうとしている通称MRI (Magnetic Resonance Imaging)は、まさに人体の主要な構成元素である水素のNMRを利用した医療診断装置であり、 NMR技術の顕著な応用例のひとつとなのです。

 

NMRは、現在においては、その原理と基礎的な実験技術が確立され、 原子、分子、液体および固体の様々な研究に応用されています。固体物性の研究においては、 NMRから得られる情報は、各原子核位置での局所的な磁化率であり、その大きな特徴は、 物質内の内部磁場といった静的な情報だけではなく、 緩和現象の測定を通じて電子や電子の担う磁気モーメントの運動といった動的な情報を同時に得られるところにあります。

 

特に超伝導や磁性を対象とした研究では、超伝導対の対称性やギャップの異方性の決定、 また磁気秩序の有無や磁気構造の同定などに大いに威力を発揮しており、 物質をミクロな立場から理解できるという意味において、その物性研究に欠くことができない実験手段となっています。

  北岡研の最近の主要な研究成果
高温超伝導および新超伝導酸化物におけるNMR
  1. d波超伝導状態の最初の提唱(1989)
  2. 超伝導の発現機構が磁気揺らぎによることを示す最初の実験証拠の提示(1997)
  3. Sr2RuO4がスピン3重項P波超伝導であることを発見(1998) *下参照
重い電子系化合物のNMR
  1. 最初の重い電子系超伝導体CeCu2Si2のスピン1重項異方的(d波)超伝導の解明(1987)
  2. ウラン系超伝導化合物の異方的超伝導特性の解明(1992)
  3. UPt3において電子系では世界で最初に奇パリティ超伝導状態であることを同定(1998)
  4. CeCu2Si2での多体量子相の発見(1999)
低次元量子スピン系のNMR
  1. 2次元三角格子量子スピン系LiNiO2での量子無秩序相の発見(1997)
  2. 反強磁性絶縁体V2O3の圧力誘起異常金属相がスピン-軌道結合量子液体の可能性を示唆(1999)

(読売新聞 1998年 1月18日)
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