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研究内容
超伝導と磁性

物性物理のフロンティア

超伝導と磁性
固体物理学において主要なこの2つの研究分野は、これまで長い研究の歴史をもち、多くの重要な研究がなされてきました。

ただし、この2つの分野はどちらかといえばむしろ相反する性質のものと見られ、それぞれの専門家によって独自の発展を遂げていたのです。

しかし 1979年に、いわゆる「重い電子系」とよばれる物質群のひとつ CeCu2Si2において超伝導が報告されてから、この流れは大きく変わることになります。

というのは、その後の研究から、これまでは磁性の起源としてのみ重要と考えられていた 電子間に働く強い電気的反発力(電子相関)が、この系の超伝導の出現とも非常に深く関わっていることが 明らかになってきたからです。

このことはさらに、それまでの超伝導の常識をまったく覆す高温超伝導が、 同じように強い電子相関をもつ物質 (強相関物質) で発見されたことによって(1986年)、 より広く認識されることとなりました。

今日では、「超伝導」と「磁性」とはかつてのように独立した分野として研究するのではなく、 強相関電子系のもつ共通の性質として理解すべきであるとの認識が一般的になっています。

強相関

このような強相関系と呼ばれる物質群に現われる超伝導の特徴の一つは、 必ず何らかの磁気秩序相に隣接する相として現われ、これは直感的に、 これらの超伝導がその磁性と深い関わりを持っていることを示しています。

そして超伝導そのものの性質も、従来のBCS理論の枠内では説明のつかない新しいタイプの超伝導であることが 様々な実験から明らかになっており、理論的にもその起源として磁気的なゆらぎを媒介とした 新しい超伝導機構が提案されています。

また最近ではUPt3とSr2RuO4という2つの強相関物質が、 電子系では初めてスピンの対が平行に揃った「スピントリプレット状態」 の超伝導体であることが明らかになり、大きな注目を集めています。

このように強相関電子系の超伝導と磁性をめぐる研究は、これまでの物理学の概念を超えた多様な可能性を秘めており、 これを究明することがこれからの物性物理、ひいては物質科学全体のフロンティアのひとつなのです。

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