超電導物性・NMR分光グループ

研究背景

■ 磁性の傍に現れる超伝導  ~強相関電子系を舞台に起こる高温超伝導現象~

我々の世界に存在する物質は、電子がもつ「電荷」とミクロな磁石の原因となる「スピン」を起源として、驚くほど多様な性質を示します。その中でも、永久磁石などで幅広く利用される「磁性体」と電気抵抗ゼロという無限の応用を秘める「超伝導体」は、「半導体」とともに現代物質文明を支える柱です。

「磁性」は、マイナスに帯電した電子の間に働く「反発力」によって電子が互いに避け合う「強相関効果」に起因している一方、電子が動き廻るために「磁性」が消失している金属が示す「超伝導」は、プラスに帯電したイオン格子の歪みを媒介にして電子間に「引力」が働くことで生じます。従って、電子間に働く引力によって起こる「超伝導」と反発力で起こる「磁性」という物理学の二つの重要な現象は、長い間、相反するものと考えられてきました。

ところが、1979年に典型的な磁性体と考えられていた「重い電子系」セリウム金属間化合物で 特異な超伝導が発見され、さらに1986年に電子スピンが反対向きに揃っている反強磁性絶縁体である「銅酸化物」に電気伝導を生じさせるキャリアをわずかにドープすることによって 室温に迫るような高温で超伝導が発見されたことは、それまでの常識を覆しました。

最近我々の核磁気共鳴を用いた研究を通じて、図に示されているように、「反強磁性体」が 圧力や電荷ドーピングによって両者の共存領域を経て「超伝導」へと連続的に変化していくことが明らかになってきました。特に銅酸化物で超伝導転移温度がこれまでのものより5倍 近く高くなっている理由は、「磁性」が絡んだ「強相関効果」に起因するものであると考えられます。このような「磁性」と「超伝導」の連携・協奏は、強相関電子系の超伝導体 全般で見られることもわかってきました。

これまでに発見されている多彩な超伝導発現機構を解明し、金属より高温で発現する 強相関系超伝導を、さらに超えた「常温超伝導物質」の創製の夢へ向けて研究に邁進しています。